通常の遺品整理では対応できない「特殊清掃」とは
一人暮らしの親が誰にも看取られずに亡くなり、発見までに時間が空いてしまった — そんな実家では、片付けの前に特殊清掃が必要になることがあります。 特殊清掃とは、ご遺体の腐敗にともなう体液や臭気、害虫、感染のおそれのある汚れを、 専用の資機材と技術で除去し、部屋を安全に入れる状態へ戻す作業です。 通常の遺品整理やハウスクリーニングでは扱えない領域で、専門の業者だけが対応できます。
まず知っておいていただきたいのは、この状況はあなたの責任ではないということです。 孤独死は、いま日本で誰にでも起こりうる社会的な問題です。 気が動転して当然の場面ですから、無理にひとりで抱え込まず、 手順を一つずつ確認していきましょう。
自分で片付けようとしないでください
費用を抑えたい一心で、家族だけで清掃しようとする方がいますが、これは避けてください。 現場には次のようなリスクがあり、多くの場合はかえって費用も負担も大きくなります。
- 感染症・衛生上の危険体液には感染のおそれがあり、専用の防護具と消毒がなければ安全に扱えません。
- 臭気は市販品では取れない腐敗臭は床材の下や壁の内部にまで染み込み、消臭剤や換気では消えません。専用のオゾン脱臭などが必要です。
- 配管トラブルのリスク浴室などで亡くなった場合、汚水をそのまま流すと固形物で配管が詰まることがあります。
- 精神的な負担が大きすぎる肉親の亡くなった現場を自分で清掃した記憶は、長く心に残ります。プロに任せてよい作業です。
特殊清掃の流れ
発見から部屋を元に戻すまでは、おおむね次のように進みます。 状況によっては家財の搬出(遺品整理)や、床・壁の張り替え(原状回復)まで一貫して依頼できます。
- 1警察の現場確認発見直後
亡くなった原因を確認するため、まず警察が対応します。この段階では部屋の清掃はされません。
- 2業者へ連絡・現地見積もり
特殊清掃に対応した業者へ連絡します。汚損の範囲を見て見積もりを出してもらいます。
- 3一次処理(体液・汚物の除去と消毒)
まず入室できる状態にするための緊急処置。汚染物を除去し、消毒します。
- 4遺品整理・家財の搬出
汚染した畳・寝具・家具を撤去し、残った遺品を仕分けます。買取を扱う業者なら費用の一部を相殺できることも。
- 5消臭・消毒(オゾン脱臭など)
専用のオゾン発生器で部屋全体の臭気を分解します。染み込みが深い場合は次の原状回復へ。
- 6原状回復・リフォーム必要な場合
臭気や汚れが下地まで達している場合、床・壁を解体して張り替えます。売却・賃貸に戻すための工程です。
費用の目安
特殊清掃の費用は「間取りの広さ」だけでなく、発見までの期間・汚損の範囲・原状回復の要否で大きく変わります。 下表は一般的な目安のレンジです。入室できるようにする一次消毒だけなら 10 万円前後から、床や壁の解体をともなう完全消臭・原状回復まで行うと 数十万円〜100 万円を超えることもあります。
| 間取り | 費用の目安(税込) |
|---|---|
| 1R・1K | 8 万円〜30 万円程度 |
| 1DK・1LDK | 12 万円〜40 万円程度 |
| 2DK・2LDK | 15 万円〜50 万円程度 |
| 3LDK 以上 | 20 万円〜60 万円以上 |
※ 一般的な目安です。汚損の程度・発見までの期間・原状回復の範囲で大きく変動します。 オゾン脱臭は 1 日あたり 2 万円程度が加算の目安です。
金額に幅があるぶん、2〜3 社の相見積もりで範囲を確かめるのが基本です。 汚損状況を見ずに電話だけで安値を提示する業者や、後から高額な追加を請求する業者には注意してください。 遺品整理費用の考え方は遺品整理業者の費用相場も参考になります。
費用は誰が負担するのか
持ち家の場合は相続人が負担します。賃貸の場合は、部屋を元に戻す原状回復の義務を相続人が引き継ぐのが原則で、連帯保証人が関わることもあります。 なお、貸主(大家)が孤独死に備えた保険(少額短期保険など)に入っていれば、 原状回復費用や家賃の損失がそこから補償されることもあります。まずは管理会社・貸主に確認してください。
注意したいのが相続放棄を検討している場合です。 遺品や家財を処分すると、相続を承認したとみなされて放棄が認められなくなるおそれがあります。 少しでも放棄を考えているなら、清掃や片付けを手配する前に専門家へ相談してください。 相続放棄そのものは実家を相続したくないときの相続放棄、 遺品に手を付けてよい時期の判断は遺品整理はいつから始めるかで解説しています。
売却への影響 — 「事故物件」になるのか
特殊清掃を要した部屋は、売却・賃貸のときに買主・借主へ伝える告知の対象になり得ます。国土交通省のガイドラインでは、 老衰や病死などの自然死は原則として告知不要とされていますが、 発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合は告知の対象になり得ます。 ただし、それで売れなくなるわけではありません。訳あり物件を専門に扱う買取業者もあり、 片付け・清掃と売却をまとめて相談できるケースもあります。売りにくい実家の選択肢は田舎の実家が売れないときの 5 つの選択肢を 参考にしてください。
業者選びのポイント
- 特殊清掃の実績が明記されているか孤独死・原状回復の対応事例を公開しているか。遺品整理だけの業者とは区別する。
- 必ず現地を見て見積もりを出すか汚損は現場を見ないと分かりません。電話だけの即答見積もりは避ける。
- 追加料金の条件が明確か「一式」ではなく、消臭・原状回復・処分費の内訳と、追加が出る条件を確認する。
- 消臭の保証があるか作業後に臭いが戻った場合の再施工の扱いを確認しておく。
- 遺品整理・買取・売却まで対応できるか一社で完結できると、遺族の手間と精神的負担が大きく減ります。
よくある質問
Q. 特殊清掃は普通の遺品整理業者やハウスクリーニングに頼めますか?
体液や腐敗による汚れ・臭気の除去、害虫・感染症への対応は専門の技術と資機材が必要で、通常の遺品整理やハウスクリーニングでは対応できないことがほとんどです。「特殊清掃」に対応していることを明記した業者に依頼してください。遺品整理と特殊清掃の両方を一社で行える業者なら、清掃後の家財の搬出までまとめて任せられます。
Q. 費用は誰が払うのですか? 相続放棄すれば払わなくてよいですか?
持ち家の場合は相続人が負担するのが原則です。賃貸の場合は、部屋を元に戻す原状回復の義務を相続人が引き継ぎ、連帯保証人が関わることもあります。ただし、相続放棄を検討している場合は注意が必要です。遺品や家財を「処分」すると相続を承認したとみなされるおそれがあり、放棄が認められなくなる可能性があります。放棄を少しでも考えているなら、片付けや清掃を手配する前に弁護士等の専門家に相談してください。
Q. 特殊清掃をすると「事故物件」になって売れなくなりますか?
国土交通省のガイドラインでは、老衰や病死などの自然死は原則として告知不要ですが、発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合は告知の対象になり得ます。ただし「事故物件だから売れない」わけではなく、訳あり物件を専門に扱う買取業者など、売る方法はあります。
※ 本記事は一般的な情報の整理です。費用は目安であり、実際の金額・対応は現場の状況によって変わります。 相続放棄や賃貸契約上の責任など個別の判断は、弁護士等の専門家にご相談ください。
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