まず確認 — 「借地の実家」は財産です
「土地が借り物だから、実家に価値はない」と思い込んで、 解体して返すことだけを考えてしまう方が少なくありません。実際には、借地権(土地を使う権利)そのものが売買される財産で、 住宅地では更地価格の 6〜7 割程度の借地権割合が設定されている地域が多くあります。 まず契約書と土地の権利関係を確認し、財産としての価値を把握するところから始めましょう。
最初に確認する 3 点
- 契約書の有無と内容 — 契約期間・地代・特約。古い借地は契約書がない こともある(それでも借地権は存続します)
- 借地権の種類 — 昔からの借地はほとんどが旧法借地権(更新を続けられる、 借り手保護が強い)。1992 年以降の契約は新法(普通借地権・定期借地権)
- 地代の支払い状況 — 滞納があると解除リスクに直結。相続後は速やかに 支払いを引き継ぐ
出口は 5 つ — 比較表
| 選択肢 | お金の流れ(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 地主に借地権を買い取ってもらう | 借地権価格で売却(交渉次第) | 地主にとっても完全所有権に戻るメリットが大きい。最初に打診する価値あり |
| 2. 地主の承諾を得て第三者に売却 | 売却額 −譲渡承諾料(借地権価格の 10% 程度が慣例的な目安) | 承諾が必須。建て替え前提の買主なら建替承諾料が絡むことも |
| 3. 地主と一緒に同時売却 | 完全所有権としての売却額を按分 | 借地権と底地をセットで売ると単体より高くなりやすい。双方に合理的 |
| 4. 借地権と底地の一部交換(等価交換) | 費用は測量・登記等 | 土地を分けてそれぞれ完全所有権に。広い土地で有効 |
| 5. 更地にして返す | −解体費(木造で坪 3〜5 万円程度) | 原則、更地返還が契約上の建前。ただし財産を放棄する選択なので 1〜4 を検討してから |
※ 承諾料等は法定のものではなく、地域慣行と交渉で決まります。金額はあくまで一般に 言われる目安です。
5 つの出口のどれに寄せるか決めかねているなら、6 つの質問で向き不向きの当たりをつけてから地主と話すと、交渉の軸がぶれません。
無料ツール(登録不要)実家どうする診断 — 売る・貸す・解体・管理の向き不向きをチェック6 つの質問で、実家に合いそうな選択肢がわかる使ってみる →進め方の定石 — 地主との関係がすべて
- 相続の報告と挨拶 — 相続での承継に地主の承諾は不要ですが(FAQ 参照)、 今後の交渉の土台になるのは日頃の関係です
- 借地権に強い不動産会社に査定を依頼 — 借地権の売買は扱える会社が 限られます。「借地権 買取」を扱う会社を複数当たる
- 地主に「買い取り or 同時売却」を打診 — 地主側にもメリットのある 1・3 から話すのが交渉のセオリー
- まとまらなければ 2(承諾を得て第三者へ) — 承諾を拒まれた場合の 借地非訟という制度もあります(FAQ 参照)
執筆担当の実体験(地主の側から)
私は逆の立場で、祖父の代から 60 年以上貸したままの底地を相続しました。 地代は長いあいだ見直されないままで、 固定資産税を差し引くと収支がマイナスだった時期があります。地主だから得をしている、とは限りません。 底地は売ろうとしても買い手が限られる財産なので、収支の合わない土地を持て余している地主もいます。 だからこそ、上の 1(買い取り)や 3(同時売却)は、 こちらから持ちかけたほうが話が動くことがあります。
注意点
- 建物の登記を確認 — 借地上の建物は、登記があることで借地権を 第三者に対抗できます。未登記・親名義のままなら相続登記を先に
- 「解体して返して」と言われても即答しない — 借地権の価値を 把握する前に応じると、財産を無償で手放すことになりかねません
- 建物買取請求権 — 契約更新が拒絶された場合等に、建物を時価で 地主に買い取るよう請求できる制度(借地借家法)があります。もつれた場合は弁護士へ
逆の立場(土地を貸している側)を相続した場合は底地を相続したらどうするをご覧ください。
よくある質問
Q. 借地権に価値があるとは知りませんでした。どのくらいの価値ですか?
住宅地では、その土地の更地価格の 6〜7 割程度を借地権が占める地域が多くあります(国税庁の路線価図に地域ごとの「借地権割合」が示されています)。つまり借地の実家は「建物+借地権」という財産です。ただし実際に売れる価格は、地主の承諾条件・建物の状態・立地で大きく変わるため、借地権の取り扱いに慣れた不動産会社の査定で確認してください。
Q. 相続したら地主の承諾や名義書換料が必要ですか?
相続による借地権の承継は譲渡ではないため、法律上、地主の承諾は不要とされ、承諾料(名義書換料)を支払う法的義務もないのが原則です。ただし地主への連絡・挨拶は今後の関係のために必ずしておくべきで、契約書の名義変更(書き換え)を求められた場合の対応は個別性があるので、不安があれば弁護士・司法書士に確認してください。
Q. 地主が売却を承諾してくれません。諦めるしかないですか?
諦める必要はありません。借地借家法には、地主の承諾に代わる裁判所の許可を求める手続き(借地非訟)が用意されています。裁判所が相当と認めれば、承諾料相当額の支払いと引き換えに譲渡が許可されます。ここは完全に弁護士の領域なので、承諾交渉が行き詰まったら借地権に強い弁護士に相談してください。この制度の存在自体が、交渉の材料になることもあります。
※ 本記事は借地借家法等の一般的な制度の解説です。地主との交渉・紛争・契約解釈は 個別性が高いため、弁護士等の専門家にご相談ください。