売れない原因は価格だけとは限らない。確認する順番がある

実家の売却は、査定を受けて媒介契約を結ぶところまでは情報がたくさんあります。 ところが売り出した後、「販売中」のまま何も起きない数か月については、 何を確認すればいいのかがほとんど書かれていません。 この期間に「値下げするしかないのか」と焦って価格だけを動かすと、 本当の原因が別のところにあった場合、下げた分がそのまま損になります。

止まっているときにまず必要なのは、値下げの決断ではなく状況の可視化です。 順番に確認していけば、原因が「価格」なのか「露出」なのか「見せ方・条件」なのかは かなり切り分けられます。しかもそのうちいくつかは、 法律で不動産会社に義務づけられている報告や書面で確かめられます。

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    媒介契約の種類と、法律上の報告頻度を確認する

    専任なら 2 週間に 1 回以上、専属専任なら 1 週間に 1 回以上の報告義務がある

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    レインズの登録証明書と、現在のステータスを確認する

    専任・専属専任なら登録義務と証明書の交付義務がある

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    反響数と内覧数を出してもらう

    「問い合わせがない」のか「内覧後に決まらない」のかで打ち手が変わる

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    売り出し価格を「成約価格」と照らし合わせる

    近隣の売り出し価格は、まだ売れていない価格

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    見せ方と引き渡し条件を見直す

    写真・訴求・現況渡しの可否・引き渡し時期

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    それでも動かないなら、売り方そのものを変える

    価格改定・古家付き・買取への切り替えを比較する

前提: 「売り出し価格」は、まだ売れていない価格

止まったときに最初に崩しておきたい思い込みが、 「近所の家が◯◯万円で出ているから、うちの実家も同じくらいで売れるはず」という見立てです。 ポータルサイトに並んでいるのは売り主の希望額であって、 その価格で成立した取引ではありません。売り出し中の物件は、 相場の証拠ではなく同じ買い手を取り合う競合として見るのが正しい使い方です (競合の価格と条件を並べて「うちはこの価格でここを訴える」と決める材料にはなります)。

同じことが査定額にも言えます。不動産会社が出す査定額は 「このくらいで売れると見込んでいます」という予想であって、その金額での売却保証ではありません。 相場が上がっているという話を前提に売り出し価格を高く設定すると、 反響が出ないまま時間だけが過ぎ、結果的に「長く売れ残っている物件」という印象がついてしまいます。

では実際の成約価格はどこで見るのか。無料で使える一次情報源は 2 つあります。

調べ先運営分かること
レインズ・マーケット・インフォメーション不動産流通機構(指定流通機構)直近の成約情報を、地域・種別・間取り・築年数・駅距離などの条件で検索できる
不動産情報ライブラリ国土交通省不動産価格(取引価格)情報、地価公示などを地図から確認できる。2024 年 4 月に土地総合情報システムを統合したサイト

※ どちらも物件が特定できない形に加工された情報で、実家とまったく同条件の事例が 見つかるとは限りません。「桁が合っているか」「売り出し価格が成約水準から離れすぎていないか」を 確かめる用途に向いています。

確認 1: 媒介契約の種類で、報告の頻度は法律で決まっている

「連絡が来ない」と感じたら、まず手元の媒介契約書で契約の種類を確認してください。 専任媒介契約・専属専任媒介契約には、宅地建物取引業法で報告の頻度が定められています。 お願いベースの話ではなく、義務です。

媒介契約の種類他社にも重ねて依頼自分で見つけた買主との直接契約業務の処理状況の報告レインズ(指定流通機構)への登録
一般媒介できるできる宅建業法上の頻度の定めはない(契約書の記載による)宅建業法上の登録義務はない
専任媒介できない(1 社のみ)できる2 週間に 1 回以上契約日から 7 日以内(休業日を除く)
専属専任媒介できない(1 社のみ)できない1 週間に 1 回以上契約日から 5 日以内(休業日を除く)

出典: 宅地建物取引業法 34 条の 2 第 5 項・第 9 項、宅地建物取引業法施行規則 15 条の 10。 登録期間の日数計算に休業日は算入しないと定められています(同規則 15 条の 10 第 2 項)。

さらに、媒介契約の種類にかかわらず、売買の申込みがあったときは遅滞なく依頼者に報告する義務があります(同法 34 条の 2 第 8 項)。そして第 3 項から第 6 項まで、 および第 8 項・第 9 項に反する特約は無効とされています(同条第 10 項)。 つまり「報告は当社の判断で行う」といった取り決めがあったとしても、 法律で定められた水準を下回る形にはできません。

専任媒介契約の有効期間は 3 か月が上限で、これより長い期間を定めても 3 か月になります(同条第 3 項)。 更新は依頼者の申出によって行うもので、更新後も 3 か月を超えられません(第 4 項)。この 3 か月という区切りが、売り方を見直す自然なタイミングになります。 「なんとなく続いている」状態を避けるために、契約日と満了日を先に確認しておいてください。

確認 2: レインズの登録証明書を見せてもらう

専任媒介・専属専任媒介を結んだ不動産会社は、上の表の期限内にレインズ(指定流通機構)へ 物件を登録しなければなりません(宅建業法 34 条の 2 第 5 項)。そして登録したら、登録を証する書面(登録証明書)を遅滞なく依頼者に引き渡す義務があります(同条第 6 項)。 手元に登録証明書がないなら、まずそれを求めるのが最初の一歩です。

加えて 2025 年 1 月 1 日から、レインズへの登録事項に 「当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況」が加わりました (宅地建物取引業法施行規則 15 条の 11 第 2 号)。いわゆるステータス管理で、 物件が今どういう状態として他社に見えているのかが登録項目になったということです。 国土交通省は同時期に売主向けのリーフレットを公表し、 登録証明書に二次元コードを掲載して売主が自分の物件の状況を確認しやすくする、という運用を案内しています (2025 年 1 月 4 日から)。

売却が長引くと「他社から問い合わせが来ているのに自分に伝わっていないのでは」という不安が生まれます。 この点について外から断定はできませんが、売主が自分で確かめられる手段が制度として用意されたという事実は押さえておく価値があります。疑って詰め寄るのではなく、 「登録証明書を見せてください」「今のステータスはどうなっていますか」と 事実確認として聞けば済む話です。まっとうに動いている会社なら、この質問で気分を害することはありません。

確認 3: 「反響ゼロ」なのか「内覧後に決まらない」のか

売れない理由を切り分ける最短ルートは、担当者に数字を出してもらうことです。 期間の長さではなく、次の 3 つの数字で状況はほぼ言い当てられます。

状況疑うべき原因先に手を打つところ
問い合わせがほぼゼロ価格、または露出(掲載先・掲載内容)掲載しているポータルサイトと写真・説明文の確認 → 成約価格との照合
問い合わせはあるが内覧に至らない写真・間取り図・説明文で判断されて外されている掲載素材の作り直し、外観・室内の見せ方
内覧はあるが申込みが入らない現地で見えた状態・条件(残置物、傷み、引き渡し時期)片付け、告知内容の整理、引き渡し条件の調整

内覧まで来ているのに決まらないケースで見落とされがちなのが、「この家でどんな暮らしができるか」が伝わっていないという問題です。 築年数・駅からの距離・部屋数といったスペックだけを並べると、 買い手は同じ条件の他の物件と表計算のように比べるしかなくなり、 古い実家は不利な側に置かれます。庭が使えること、収納が多いこと、 周囲が静かなこと、駐車スペースが 2 台とれること — 数字にならない部分は、 売主のほうが詳しいはずです。担当者に伝えて掲載内容に反映してもらってください。

確認 4: デメリットは先に出したほうが、結局早い

古い実家を売るとき、不具合や欠点を伝えると売れなくなるのではと不安になります。 ただ、隠したまま売ると、契約後や引き渡し後に「聞いていない」という話になり、 金銭的にも精神的にも売主側のダメージが大きくなります。 最初から開示したほうが、買い手の側も「この価格ならその状態でいい」と納得しやすく、 結果的に取引はスムーズになります。

伝えるべき内容の整理と、家財を残したまま売る場合の条件については片付けずに実家を売る「現状渡し」古家付き土地として売るメリット・デメリットで 扱っています。特に契約不適合責任をどう特約で定めるかは、 古い家の売却では価格そのものより重要になることがあります。

確認 5: 価格を動かすか、売り方そのものを変えるか

ここまでを確認したうえで、まだ動かないなら選択肢は 3 つに整理できます。

そもそも需要が細っているエリアで、価格以外に原因があるケースもあります。 その場合の選択肢の広げ方は田舎の実家が売れないときの 5 つの選択肢にまとめました。

担当者に聞くこと

電話でもメールでも構いませんが、まとめて聞いたほうが状況が一度で見えます。 責める必要はまったくなく、事実確認として並べれば十分です。

任せきりにしないための、売主側の準備

一度のヒアリングで売主の事情がすべて伝わることはまずありません。 いつまでに現金化したいのか、家財の片付けはどこまで自分でやれるのか、 金額と時期のどちらを優先するのか — こうした前提は、 売主側から言葉にしないと相手には見えません。逆にそこが共有できていないと、 担当者は「無難な価格で無難に待つ」以外の提案をしにくくなります。

不動産会社との間で条件の行き違いが起きて関係がぎくしゃくすることもあります。 ただ、その会社を選んで契約したのは自分だ、という前提に立つほうが結果的に選択肢は広がります。 媒介契約を結ぶ前の見極めに時間をかけ、結んだ後は数字と書面で確認していく。 この 2 つで、止まったまま何も分からないという状態はかなり避けられます。

そして忘れがちですが、売れるのを待っている間も 固定資産税・電気・水道・保険・管理の手間は出続けます。 「あと半年待つ」という判断のコストを一度数字にしておくと、 価格改定や買取への切り替えを冷静に比べられます。

よくある質問

Q. 専任媒介にしたのに 1 か月以上連絡がありません。放置されているのでしょうか?

宅地建物取引業法 34 条の 2 第 9 項は、専任媒介契約なら 2 週間に 1 回以上、専属専任媒介契約なら 1 週間に 1 回以上、業務の処理状況を依頼者に報告することを定めています。これに反する特約は同条第 10 項で無効とされます。1 か月連絡がない状態はこの頻度を満たしていない可能性が高いので、まずは書面かメールで報告を求めてください。改善しない場合は、媒介契約の有効期間(専任媒介は 3 か月が上限。同条第 3 項)の満了に合わせて契約先を見直す、免許行政庁(都道府県の宅建業担当窓口または国土交通省の地方整備局)に相談する、といった対応が考えられます。個別のケースが違反にあたるかどうかは事実関係によるため、断定はできません。

Q. 売り出してから何か月売れなかったら値下げすべきですか?

「何か月で下げる」という一律の基準はありません。判断材料は期間そのものより数字です。問い合わせも内覧もゼロのまま数か月経っているなら、価格か露出(掲載先・見せ方)に原因がある可能性が高くなります。内覧は入るのに決まらないなら、価格よりも家の状態・引き渡し条件・写真や説明の見せ方を疑う順番になります。専任媒介の有効期間は 3 か月が上限なので、更新のタイミングを「価格と売り方を見直す区切り」として使うと判断しやすくなります。

Q. 実際にいくらで売れているのか(成約価格)はどこで調べられますか?

ポータルサイトに出ている近隣物件の価格は「売り出し価格」で、まだ売れていない価格です。成約した価格を調べるなら、不動産流通機構(レインズ)が一般向けに公開している「レインズ・マーケット・インフォメーション」で、地域・種別・間取り・築年数などの条件から直近の成約情報を検索できます。あわせて国土交通省の「不動産情報ライブラリ」(2024 年 4 月に土地総合情報システムを統合したサイト)の不動産価格(取引価格)情報も使えます。どちらも無料で、登録は不要です。

※ 本記事は宅地建物取引業法および同施行規則の条文、国土交通省の公表資料に基づく 一般的な情報提供です。個別の契約が法令に違反するかどうかの判断や、 具体的な法的対応については、免許行政庁の窓口や弁護士等の専門家にご相談ください。

売却の全体の流れを先に確認したい方は実家売却の流れ 8 ステップをご覧ください。