なぜ「実家の承継」に遺言書が効くのか

遺言書がないと、実家を誰が継ぐかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。 このとき相続人全員の実印と印鑑証明が必要で、一人でも 遠方・疎遠・非協力だと手続きが止まります。 遺言書で承継先が決まっていれば、この協議を経ずに名義変更や売却へ進めます。

実家は分けにくい資産です。「長男が住み続ける」「売って現金で分ける」など 方針を本人の言葉で残しておくと、共有名義を 避けやすく、きょうだい間のわだかまりも減らせます。 これは親が元気なうちに進める生前整理の 仕上げにあたる準備です。

遺言書が特に必要な人

誰にでも必須というわけではありませんが、次に当てはまる場合は 遺言書の効果が大きくなります。

※ 兄弟姉妹には遺留分がありませんが、子・配偶者・直系尊属には遺留分があります。 遺言書はこの点にも配慮して作る必要があるため、内容は専門家に確認するのが安全です。

遺言書 3 つの方式を比較

実務でよく使われるのは、自筆証書遺言・法務局の保管制度を使う自筆証書遺言・ 公正証書遺言の 3 つです。

方式作り方・費用の目安向いているケース
自筆証書遺言本文を自分で手書き(財産目録はパソコン可)。費用はほぼかからないまず手軽に残したい。ただし形式不備・紛失・改ざんのリスクあり
自筆証書遺言 + 法務局保管自筆で書いて法務局に預ける。保管手数料 1 件 3,900 円(法務局)手軽さを保ちつつ、紛失・改ざんを防ぎたい。家庭裁判所の検認も不要に
公正証書遺言公証人が作成・保管。証人 2 名が必要。財産額に応じた手数料実家など重要資産を確実に承継させたい。無効になりにくい

手軽さと確実さはトレードオフです。少額なら自筆証書+法務局保管、 実家のように大きく分けにくい資産が中心なら公正証書、というのが一つの目安になります。

2026 年の法改正 — 押印廃止とデジタル遺言

遺言制度は大きく変わろうとしています。2026 年 6 月に 「民法等の一部を改正する法律」が成立・公布され、次の 2 点が決まりました。

ただし、これらはまだ施行されていません(2026 年 7 月時点)。 「押印が廃止された」という情報を目にしても、今から書くなら、これまでどおり押印を含む現行ルールで作成するのが正解です。 施行時期や細かい要件は今後定められるため、最新の状況は法務省の案内や専門家で確認してください。

まず何から始めるか

いきなり完璧な遺言書を目指す必要はありません。 まずは重要書類・資産情報の把握で 「何を・誰に」の材料をそろえ、実家を誰にどう継がせたいかを本人と家族で話す。 方針が固まったら、内容の妥当性(遺留分など)を司法書士・弁護士に確認して形にする、 という順番が現実的です。

よくある質問

Q. 遺言書があると、実家の相続手続きはどう楽になりますか?

遺言書で「実家は誰が継ぐ」と決まっていれば、原則として相続人全員の実印・印鑑証明を集めた遺産分割協議をしなくても、指定された人が名義変更や売却の手続きを進められます。相続人が遠方・疎遠・多人数のときほど、この差は大きくなります。ただし遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)には配慮が必要です。

Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがよいですか?

手軽さなら自筆証書、確実さなら公正証書です。自筆証書は自分で書けて費用も低い反面、形式不備で無効になったり、紛失・改ざんのリスクがあります(法務局の保管制度を使うとこのリスクは減らせます)。公正証書は公証人が関与するため無効になりにくく、原本が公証役場に保管されますが、費用と証人の手配が必要です。実家など重要な資産を確実に承継させたい場合は、公正証書が選ばれることが多いです。

Q. 2026 年に遺言書のルールが変わると聞きました。今書いても大丈夫?

大丈夫です。2026 年 6 月に改正法が成立・公布され、遺言書の押印廃止やデジタル遺言(保管証書遺言)の新設が決まりましたが、これらはまだ施行されていません(2026 年 7 月時点)。押印廃止は公布から 1 年以内、保管証書遺言は 3 年以内に施行される予定です。つまり今書くなら、これまでどおり押印を含む現行ルールで作成します。最新の施行状況は法務省の案内や専門家に確認してください。

※ 遺言書の有効要件・遺留分・具体的な文面は個別性が高い専門領域です。 実際に作成する際は、司法書士・弁護士・公証役場等にご相談ください。