持ち物の記名と、実家の書類確保を同時に進める

施設の入所が決まってから当日までにやることは、大きく 3 つに分かれます。①施設に提出する書類をそろえる、②持ち物を用意して記名する、 ③実家にある重要書類を確保する。この 3 つは担当する窓口も置き場所も違うため、 順番にこなそうとすると必ずどれかが間に合いません。並行して走らせるのが前提です。

特に見落とされやすいのが②の記名③の書類です。 記名は 1 枚ずつの地道な作業で、量が読めていないと最後の数日に一気に押し寄せます。 書類は、入所の慌ただしさの中で家の片付けを始めてしまうと、 そのまま捨ててしまうリスクが出てきます。

※ 「2 週間」はあくまで目安です。特別養護老人ホームは待機が長い一方、 入所の順番は申込み順ではなく必要性・緊急性の高い方から案内されるしくみのため (横浜市の入退所指針など)、空きの連絡は突然来ます。 逆に、老健や有料老人ホームでは決定から入所までがもっと短いことも、 面談や健康診断のために長くかかることもあります。準備期間は施設と状況で変わります。

入所決定から入所後までの段取り

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    施設から「持ち物一覧」と「必要書類」をもらう決定した日

    記名の要否・洗濯を誰がするか・持ち込める量・施設が用意する日用品の範囲を、この時点で全部聞く

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    書類の手配を先に走らせる〜3 日

    診療情報提供書・健康診断書はかかりつけ医の予約が要る。日数がかかるものから着手する

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    実家で重要書類を捜索・確保する〜1 週間

    保険証類・通帳・印鑑を最優先。片付けより先に書類の仕分けを終わらせ、誤廃棄を防ぐ

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    衣類を仕分けながら、その場で記名する〜1 週間

    「施設へ持つ / 実家に残す / 処分する」に分け、持つものだけ記名。二度手間を避ける

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    入所当日の持ち物を最終確認する前日

    契約書類・保険証類・薬は当日必須。追加の衣類は後日持ち込みでよいか施設に確認

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    市区町村で入所後の手続きをする入所後

    住所変更、市外の施設なら住所地特例適用届。該当すれば負担限度額認定の申請も

まず施設に確認する 4 つのこと

入所準備でいちばん多い失敗は、ネットや他の人の話を基準に用意して、その施設のルールと合わなかったというものです。 持ち物のルールは施設種別によっても、同じ種別の中の個々の施設によっても違います。 最初にこの 4 つを聞いてから動いてください。

施設の種類で「前提」が違う

持ち物の細かいルールは施設ごとですが、費用の軽減制度が使えるか、住民票を移したときの扱いはどうなるかといった制度面は、施設の種類でおおむね決まります。 入所先がどれに当たるかを最初に確認しておくと、あとの手続きで迷いません。

施設の種類主な対象位置づけ食費・居住費の軽減住所地特例
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)原則 要介護 3〜5(要介護 1・2 はやむを得ない事情がある場合)生活の場。長期の利用が前提対象対象
介護老人保健施設(老健)要介護 1〜5在宅復帰を目指してリハビリ・医療・介護を受ける場対象対象
介護医療院要介護 1〜5長期の療養が必要な人の、医療と生活の場対象対象
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)認知症のある要支援 2・要介護 1〜55〜9 人の少人数で共同生活。地域密着型対象外対象外
有料老人ホーム・軽費老人ホーム等(特定施設入居者生活介護)要支援 1〜要介護 5住まいに介護サービスが付く形対象外対象(サービス付き高齢者向け住宅・養護老人ホームも)

※ 対象者・位置づけは厚生労働省の介護サービス情報公表システムの説明に基づく一般的な区分です。 「食費・居住費の軽減」は介護保険負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)を指し、 世帯全員が住民税非課税であることや、本人・配偶者の預貯金等が段階ごとの基準額以下であることなどの 要件があります。認定証には有効期間があり、毎年の更新申請が必要です。 要件・手続きの詳細はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。

施設に出す書類 — 日数がかかるものから手配する

必要書類は施設が指定します。下は多くの施設で求められるものの一覧ですが、すべての施設で同じではありません。 特に医師が書く書類は予約と作成に日数がかかるので、一覧をもらったその日に動いてください。

介護保険被保険者証や負担割合証が見つからない、有効期限が切れているといった場合は、 市区町村の介護保険担当窓口で再交付を受けられます。 こうした保険証類が行方不明で入所手続きが止まる、というのは実際によく起きる事態です。 平時からの備えについては実家の重要書類 7 分野にまとめています。

持ち物の記名は「仕分けと同時」に

施設を利用するときは、衣類(下着・靴下を含む)や私物に名前を明記するよう求められることが多い、 という報告があります。紛失や他の入居者の物との取り違えを防ぐためで、 実際に「油性マジック等ではっきりとご記名ください」と案内している施設もあります。

この作業を軽く見ると、入所直前に泣くことになります。 効率を上げるコツは、実家の衣類を仕分けながら、持っていくと決めたものにその場で記名することです。仕分けを終えてから記名を始めると、同じ引き出しを二度開けることになります。

仕分け先判断の基準入所前にやること
施設へ持っていく着脱しやすく、洗濯・乾燥に耐える素材。季節に合った必要最低限の枚数その場で記名する。枚数は施設の目安に合わせ、多く持ち込みすぎない
実家に残す季節が変わったら使うもの、判断に迷うもの、思い出として本人が手放したくないものまとめて 1 か所に。次の面会で持っていける状態にしておく
処分する傷み・サイズ違い・長年着ていないことが明らかなもの入所準備の期間に無理に決めない。判断に迷うものは「保留」に回す

処分の判断を入所準備と同時にやろうとすると、時間も気力も足りません。 この段階は「持っていくものを選び切る」ことだけに集中し、 残りの大量の家財は入所が落ち着いてから親が施設に入ったあとの実家の片付けとして 進めるほうが、結果的に早く終わります。

※ 本人が判断できる状態なら、持っていくものは一緒に選んでください。 後から「なぜ捨てた」とこじれる原因の多くは、本人不在で処分を決めたことにあります。

同じ期間に、実家の書類を確保する

入所準備は、実家の重要書類を確保する最後のチャンスになることがあります。 高齢の方は貴重品を仏壇の引き出し・タンスの奥・古いバッグ・金庫などに 分散して保管していることが多く、片付けの初期に書類を仕分けておかないと、 不用品と一緒に処分してしまうおそれがある、という報告があります。

平時の書類整理と違い、この場面では期限が切られています。 全部を完璧にそろえようとせず、次の順番で確保してください。

あわせて確認したいのが、お金の出し入れをどうするかです。 施設の費用は毎月発生しますが、金融機関が本人の判断能力の低下を知ると口座が凍結され、 家族でも引き出せなくなることがあります。年金は振り込まれ続けるのに介護費用に使えない、 という事態は実際に起こります。 仕組みと備えは親が認知症になると口座が凍結されるで 整理しています。実家の売却も同じ制約を受けるため、 将来家を手放す可能性があるなら親が認知症になると実家が売れないも あわせて確認しておいてください。

なお、保管場所の確認は親と意思疎通ができるうちに済ませるのが鉄則です。 入所準備をきっかけに一度整理しておくと、そのまま生前整理の起点になります。

入所後に市区町村でやる手続き

入所してからも手続きが残ります。自治体によって窓口名や様式は違いますが、 おおむね次の 3 つです。施設の相談員が案内してくれることもありますが、申請しないと適用されないものがあるので、自分でも押さえておいてください。

※ 郵便物の宛先変更(送付先届出)を受け付けている自治体もあります。 実家が空き家になると郵便物が溜まり、防犯上も好ましくありません。 あわせて窓口で相談してみてください。

よくある質問

Q. 入所日までに準備が間に合いません。どうすればいいですか?

すべてを入所日にそろえる必要はない場合が多く、「入所日に必ず要るもの」と「後から届けられるもの」を施設に聞いて切り分けるのが先決です。一般に、契約書類・保険証類・薬(お薬手帳)は入所日に必要ですが、衣類の追加分や趣味の品は後日持ち込みで対応できることがあります。記名が終わっていない衣類も、必要最低限の枚数だけ先に記名して持参し、残りは次の面会時に、という進め方が現実的です。まずは施設の相談員・ケアマネジャーに「今の時点で何が足りないか」を確認してください。

Q. 下着や靴下にまで名前を書く必要がありますか?

施設が洗濯を行う場合、他の入居者の衣類と混ざるのを防ぐため、下着・靴下を含むすべての衣類への記名を求める施設は少なくありません。実際に「油性マジック等ではっきりご記名ください」と案内している施設もあります。一方で、家族が持ち帰って洗濯する取り決めの施設や、有料のリネンサービスを使う施設では扱いが変わります。記名の要否・書く位置・方法(直接書くか、名前シールやスタンプでよいか)は施設によって違うので、必ず入所前に施設の案内(持ち物一覧・入所のしおり)で確認してください。

Q. 親が施設に入ったら、実家はすぐ片付けないといけませんか?

入所準備の段階で急いで全部を片付ける必要はありません。この時期に優先すべきは、通帳・印鑑・保険証券・権利証などの重要書類を確保することと、誤って捨てないことです。家そのものの方針(売る・貸す・解体する)や大量の家財の処分は、入所が落ち着いてから考えて構いません。ただし人が住まなくなった家は傷みや防犯上のリスクが上がるため、通風・通水などの最低限の管理は続けてください。入所後の片付けの進め方は別記事にまとめています。

※ 持ち物・記名のルール、必要書類、持ち込める量は施設種別・施設ごとに大きく異なります。 本文の内容は一般的な傾向と公開情報に基づく目安ですので、 必ず入所先の施設が配布する持ち物一覧・入所案内で確認してください。 制度の要件や申請方法はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に、 介護や施設選びの個別の判断はケアマネジャー・施設の相談員・ 地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)にご相談ください。