自分でできる? — シンプルな相続なら十分可能
「亡くなった親の名義の実家を、遺産分割協議で決めた相続人 1 人の名義にする」という 典型的なケースなら、相続登記は自分で申請できます。 費用は登録免許税(固定資産税評価額の 0.4%)と書類の取得費だけで、 司法書士報酬(数万〜十数万円)を節約できます。 法務局には手続案内(予約制)もあり、初めてでも進められる体制が整っています。
手順 7 ステップ
- 1登記事項証明書で現在の名義を確認
法務局で取得(オンライン請求も可)。共有・抵当権の有無もここで判明
- 2戸籍一式を集める2 週間〜1 か月
被相続人の出生〜死亡の連続した戸籍 + 相続人全員の現在戸籍
- 3(推奨)法定相続情報一覧図を作る
戸籍の束の代わりに使える認証書類。銀行手続きにも使い回せる
- 4遺産分割協議書を作成
不動産の表示を登記事項証明書どおりに記載。相続人全員の実印 + 印鑑証明書
- 5固定資産評価証明書を取得
市区町村役場(都税事務所)で。登録免許税の計算に必要
- 6登記申請書を作成し、登録免許税を納付
法務局サイトに様式と記載例あり。税額は評価額 × 0.4%(収入印紙で納付)
- 7管轄法務局に申請完了まで計 1〜3 か月
窓口・郵送・オンラインの 3 通り。審査 1〜2 週間で完了
必要書類のチェックリスト
| 書類 | 取得場所 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍(出生〜死亡) | 本籍地の市区町村 | 2024 年から最寄りの役所での広域交付も可能に |
| 被相続人の住民票の除票 | 最後の住所地 | 登記上の住所とのつながりを証明 |
| 相続人全員の戸籍 | 各本籍地 | 現在のもの |
| 不動産を取得する人の住民票 | 住所地 | 新しい名義人の分 |
| 遺産分割協議書 + 印鑑証明書 | 自作 + 各住所地 | 相続人全員の実印押印 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の役所 | 最新年度のもの |
※ 遺言書がある場合・法定相続分どおりに登記する場合は必要書類が変わります。 法務局の案内で自分のケースの書類を確認してください。
登記申請書には何を書くのか
手順のなかで手が止まりやすいのが、この申請書です。 決まった用紙に決まったことを書くだけなのですが、 欄の名前が耳慣れないため難しく見えます。 法務局が公開している記載例をもとに、どの欄に何を書くのかを並べます。
| 欄 | 書く内容 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 登記の目的 | 「所有権移転」 | 相続でも「相続登記」とは書かない |
| 原因 | 「令和◯年◯月◯日相続」 | 日付は亡くなった日。申請日ではない |
| 相続人 | かっこ書きで被相続人の氏名、続けて取得する人の住所・氏名 | 持分がある場合は「持分◯分の◯」を氏名の前に。ふりがな・生年月日・メールアドレスの欄もある |
| 添付書類 | 登記原因証明情報・住所証明情報 | 書類名ではなく、この呼び方で書く |
| 申請日と法務局名 | 「令和◯年◯月◯日申請」+ 管轄の法務局・支局名 | 管轄は不動産の所在地で決まる。住所地ではない |
| 連絡先の電話番号 | 日中つながる番号 | 不備(補正)の連絡はここに来る。省略しない |
| 課税価格 | 固定資産評価証明書の評価額をもとにした額 | 記載例では「金 2,000 万円」と記載されている |
| 登録免許税 | 課税価格 × 0.4% | 記載例は課税価格 2,000 万円に対し「金 80,000 円」 |
| 不動産の表示 | 不動産番号・所在・地番・地目・地積(建物は家屋番号・種類・構造・床面積) | 登記事項証明書の表記をそのまま写す。手元の住所表記と違うことがある |
書式そのものの注意点も、記載例に書かれています。 用紙の上部には受付シールを貼るスペースがあり、 この部分には何も記載しないよう案内されています。 申請書が複数ページになるときは契印が必要です。 あわせて相続関係説明図を添付しますが、これも同じ記載例のなかに書き方があります。
様式と記載例は、法務局の「不動産登記の申請書様式について」で公開されています。 相続のパターン(遺産分割・法定相続分・遺言など)ごとに別の記載例が用意されているので、自分のケースに合う様式を選んでから書き始めるのが早道です。 迷ったら法務局の手続案内(予約制)で、書いたものを見てもらえます。
つまずきやすいポイント
- 戸籍の読み解き — 古い戸籍(手書きの改製原戸籍)の判読が最大の難所。 分からなければ法務局の手続案内か司法書士へ
- 登記上の住所と最後の住所が違う — 住民票の除票や戸籍の附票でつながりを証明する必要がある
- 補正(書類の不備) — 不備があると法務局から連絡が来て修正対応。 郵送申請だと往復で日数がかかる
専門家に頼む場合、相続登記の代理は司法書士の領域ですが、遺産分割で揉めていれば弁護士、 相続税の申告が絡めば税理士と、内容によって頼る先が変わります。士業の使い分けは相続の相談先ガイドで解説しています。
登記が終わったら次は売却・処分の検討へ
名義変更は実家じまいの通過点です。登記完了後は売却の流れや売れない場合の選択肢に進んでください。 費用面の全体像は名義変更の費用、 制度の期限は義務化のルールで解説しています。
登記を後回しにしたまま話が進み、売却の直前で止まる — これは典型的な出戻りのパターンです。 先に知っておきたい失敗はやってはいけないこと 10にまとめています。
よくある質問
Q. 自分でやると、どのくらいの期間がかかりますか?
戸籍の収集に 2 週間〜1 か月(本籍地の移動が多いほど長い)、遺産分割協議と書類作成に数週間、法務局の審査に 1〜2 週間程度で、合計 1〜3 か月が目安です。平日に役所・法務局とやり取りできるかどうかで所要期間は大きく変わります。
Q. 法定相続情報一覧図とは何ですか? 作った方がいいですか?
戸籍の束の代わりに使える、法務局認証の相続関係の一覧図です(法定相続情報証明制度)。一度作れば無料で複数枚発行でき、登記だけでなく銀行の相続手続きや相続税申告でも戸籍一式の代わりに使えます。相続手続き先が複数ある場合は、先に作っておくと全体の手間が大きく減ります。
Q. 登記申請書の書き方で、特に間違えやすいのはどこですか?
日付と管轄です。「原因」の欄に書く日付は申請日ではなく被相続人が亡くなった日で、提出先の法務局は自分の住所地ではなく不動産の所在地で決まります。また「登記の目的」は相続でも「所有権移転」と書きます。連絡先の電話番号も省略しないでください。書類に不備があったときの補正の連絡がここに来ます。法務局は相続のパターンごとに記載例を公開しているので、自分のケースに合う様式を選んでから書き始めるのが確実です。
Q. 自分でやらず司法書士に頼んだ方がいいのはどんな場合ですか?
(1) 相続人が多い・疎遠・海外在住、(2) 数次相続(登記しないまま次の相続が発生)や代襲相続が絡む、(3) 遺産分割で意見が割れている、(4) 売却の期限が迫っていて確実に早く終わらせたい — のいずれかに当てはまる場合です。費用の比較は「名義変更の費用」の記事で解説しています。
※ 本記事は一般的な手続きの解説です。個別のケースの登記手続き・遺産分割の内容に関する 判断は司法書士・弁護士にご相談ください。