再婚家庭の実家相続で先に押さえたい 3 つのこと
再婚を経たご家庭の相続は、当事者が「悪い人」でなくても揉めます。 理由は単純で、お互いに顔を知らない相続人どうしが、実家という分けにくい財産をめぐって同じテーブルに着くことになるからです。 私も調べていて、感情の問題より先に「制度がそうなっている」部分が大きいのだと感じました。
まず、法律上の骨組みだけを 3 つに絞ると次のようになります。
- 前の結婚のときの子は、離婚しても親権の有無に関係なく相続人離婚で終了するのは姻族関係(民法 728 条 1 項)。親と子の関係は続くため、民法 887 条 1 項の「子」として相続人になる
- 再婚相手の連れ子は、養子縁組をしていなければ相続人にならない名字が同じでも、長く一緒に暮らしていても変わらない。遺すには養子縁組か遺贈という別の手当てがいる
- 遺産の大半が実家だと、現在の配偶者の住まいが不安定になりやすい分けるお金がないと自宅を売る話になりがち。2020 年 4 月施行の配偶者居住権(民法 1028 条〜)はここに効く制度
この記事は、法務省・裁判所・国税庁・日本年金機構などの公表資料と条文をもとにした一般的な制度の説明です。誰がどれだけ受け取るべきか、遺留分がいくらになるかといった 個別の判断はできません。具体的な事案は弁護士に、税額は税理士にご相談ください。
誰が相続人になるのか — 立場別の一覧
再婚家庭でいちばん最初にこじれるのが「そもそも誰が話し合いに入るのか」です。 条文にあてはめると、次のように整理できます。
| 立場 | 相続人になるか | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 現在の配偶者(再婚相手) | なる | 民法 890 条。配偶者は常に相続人になる |
| 元配偶者(離婚した相手) | ならない | 離婚で婚姻関係が解消されているため、民法 890 条の配偶者にあたらない |
| 前の結婚のときの子 | なる | 民法 887 条 1 項。親権が元配偶者にあっても、疎遠でも変わらない |
| 再婚後に生まれた子 | なる | 民法 887 条 1 項。前の結婚のときの子と相続分は等しい(民法 900 条 4 号本文) |
| 再婚相手の連れ子(養子縁組なし) | ならない | 実子でも養子でもないため。同居年数や名字は関係しない |
| 再婚相手の連れ子(養子縁組あり) | なる | 民法 809 条により縁組の日から嫡出子の身分を取得し、民法 887 条 1 項の子になる |
※ 条文は e-Gov 法令検索(民法)による。相続分は民法 900 条 1 号により子と配偶者が各 2 分の 1、 子が複数いるときは各自が等しい割合(同 4 号本文)になります。 相続放棄や廃除など、この表に収まらない事情がある場合の扱いは個別に確認が必要です。
前の結婚のときの子を外した遺産分割協議は成立しない
「もう何十年も会っていないし、向こうも実家に興味はないはず」。 そう考えて、現在の家族だけで話をまとめてしまうケースがあると聞きます。 ただ、民法 907 条 1 項は遺産分割の協議を「共同相続人」が行うものと定めており、 相続人が一人でも欠けた協議は無効と解されています。 家庭裁判所の遺産分割調停も、相続人のうちの一人または何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てる形になっています(裁判所「遺産分割調停」)。
実務上の影響は、実家の名義変更でそのまま出ます。遺産分割協議書には相続人全員の署名と実印が必要で、 一人でも欠ければ法務局でも金融機関でも通りません。 結果として実家の登記が止まり、相続登記の義務化の期限とも重なってきます。
連絡先が分からないときにたどる順番
住所も連絡先も分からない、というのは再婚家庭ではむしろ普通のことです。 制度としては、戸籍をたどって相続人を特定し、戸籍の附票で現在の住所を確認する道が用意されています。 戸籍の附票の写しは、自己の権利の行使のために記載事項を確認する必要がある人などが 市町村長に交付を申し出ることができるとされています(住民基本台帳法 20 条 3 項)。
- 1被相続人の出生から死亡までの戸籍をそろえるまず最初に
前の結婚と離婚、子の出生は戸籍に記録されている。ここで相続人の全体像が確定する
- 2相続人それぞれの現在の戸籍・本籍地を確認する次に
戸籍の附票は本籍地の市区町村が備えているため、本籍が分からないと請求先が決まらない
- 3本籍地の市区町村に戸籍の附票の写しを請求する住所の確認
住民票上の住所の履歴が記録されている(住民基本台帳法 20 条)。請求できる範囲・必要書類は各市区町村の案内に従う
- 4手紙で連絡を取る最初の接触
突然の電話や訪問は身構えられやすい。まず事実と連絡先を簡潔に書いた手紙から、という進め方が一般的
- 5まとまらない・返事がない場合は家庭裁判所の調停へ協議が難しいとき
相続人全員が当事者になる。代理や交渉を頼めるのは弁護士だけなので、この段階に入る前に相談を
ここで大事なのは、連絡を取ること自体は敵対行為ではないということです。 前の結婚のときのお子さんの側から見れば、何の説明もないまま実家が処分されていたほうが不信感は強く残ります。 反対に、現在の配偶者やお子さんの側にも、長年その家を守ってきたという事情があります。 どちらかが不当というより、制度上、全員が当事者になるという前提を共有するところからだと思います。
相続人の確定から実家の名義変更・処分までのやることは、進捗を保存できるチェックリストで管理できます。
無料ツール(登録不要)実家じまいチェックリスト【進捗が保存できる実践版】チェックした進捗を自動保存。印刷して親族と共有も使ってみる →連れ子には相続権がない — 遺すなら養子縁組か遺贈
再婚後、同じ名字で長年一緒に暮らしてきた連れ子でも、養子縁組をしていなければ相続人にはなりません。 相続人になるのは民法 887 条 1 項の「被相続人の子」であり、 連れ子は実子でも養子でもないからです。 「家族としてやってきたのだから当然に相続できる」と思い込んでいると、 いざというときに何も遺せません。
財産を遺す方法としては、大きく次の 2 つがあります。
- 養子縁組をする — 実子と同じ立場になる民法 809 条により縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得。相続人になり、遺留分(民法 1042 条)も持つ。相続税では被相続人の養子は一親等の法定血族なので原則 2 割加算の対象外(国税庁 No.4157。孫養子など例外あり)
- 遺言で遺贈する — 相続人にはならないが財産は渡せる相続人ではないため、相続税額は 2 割加算の対象になる(一親等の血族および配偶者以外の人が取得した場合。国税庁 No.4157)
養子縁組は、ほかの相続人の相続分や遺留分の割合にも影響します。 法定相続人が増えるため、相続税の基礎控除や生命保険金の非課税限度額の計算にも関わってきます (養子の数の算入には制限があります。国税庁タックスアンサー No.4114)。 「連れ子に遺したい」という気持ちだけで決めると、 ほかのお子さんとの関係に別の火種を作ることにもなり得るので、相続の相談先で触れているとおり、 弁護士・税理士に全体像を見てもらってから決めるのが無難です。
遺言書があると何が変わるか — 協議を回避できる、ただし遺留分は残る
再婚家庭で遺言書が特に勧められるのは、節税のためというより、疎遠な相続人との直接の話し合いを経なくても手続きを進められるようにするためです。 民法は、被相続人が遺言で共同相続人の相続分を定めること(902 条 1 項)、 遺産の分割の方法を定めること(908 条 1 項)を認めています。 誰が何を取得するかが遺言で決まっていれば、その財産について全員で協議し実印を集める場面を減らせます。
遺言書の種類(自筆証書・法務局保管・公正証書)や最新の改正動向は実家を揉めずに継ぐための遺言書にまとめています。 再婚家庭では、形式不備で無効になるリスクを避ける意味でも、 公証人が関与する形を選ぶ方が多いようです。
用語に注意 — 現在は「遺留分侵害額請求」
ただし、遺言があっても遺留分の問題は残ります。 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり、その割合は直系尊属のみが相続人である場合は 3 分の 1、 それ以外の場合は 2 分の 1 に、各自の相続分を乗じたものとされています(民法 1042 条)。
ここで古い情報に注意が必要です。2019 年 7 月 1 日施行の相続法改正により、 遺留分に関する権利の行使は遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する権利に改められました (民法 1046 条 1 項、法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」)。 改正前の「遺留分減殺請求」は、行使すると不動産が当然に共有状態になるしくみでしたが、 現在は金銭債権です。ネット上には旧制度の解説も残っているので、実家が自動的に共有になるという前提の情報を見かけたら年代を確認してください。 実家が共有状態になったときの扱いは共有名義の実家を売るにはで整理しています。
なお、遺留分侵害額の請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から 1 年間行使しないと時効で消滅し、相続開始の時から 10 年を経過したときも同様とされています(民法 1048 条)。 請求する側にもされる側にも期限があるということです。金額の計算は専門的なので、 具体的な数字が絡む段階になったら弁護士に相談してください。
記事の核 — 遺産の大半が実家のときの「配偶者居住権」
再婚家庭の相続がこじれる典型が、財産のほとんどが自宅で、現金がほとんどないケースです。 現在の配偶者が自宅を単独で取得しようとすると、ほかの相続人に代償金を支払う話になります。 その現金がなければ、自宅を売って分けるという結論に傾き、 配偶者は長年住んできた家を出ることになりかねません。
この場面のために 2020 年 4 月 1 日に施行されたのが配偶者居住権です (民法 1028 条〜1036 条、法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」)。 被相続人の配偶者が、相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、 遺産分割で取得するものとされたとき、または配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに、 その建物全部について無償で使用・収益できる権利を取得します(民法 1028 条 1 項)。
所有権は子が取得し、住む権利は配偶者が持つという形に分けられるのが要点です。 法務省も、配偶者が配偶者居住権を取得することで預貯金などほかの遺産をより多く取得できる、 というメリットを挙げています。
住まいを守る手段の比較
| 配偶者居住権を遺贈で設定 | 自宅の所有権を配偶者に遺贈 | 生命保険で現金を用意 | |
|---|---|---|---|
| 配偶者が得るもの | 終身、無償で住み続けられる権利(民法 1030 条) | 自宅そのもの(売る・貸すも自由) | 受取人固有の財産としての現金 |
| 実家の所有権 | 子が取得(負担付きの所有権になる) | 配偶者が取得。子には残らない | 遺産分割の結果しだい |
| 他の相続人への影響 | 所有権の評価が下がる分、他の遺産を分けやすくなる | 自宅が丸ごと配偶者に移り、遺留分の争点になりやすい | 原則として遺産分割の対象外(後述の判例に注意) |
| 配偶者の死亡後 | 権利は消滅し、子が完全な所有権を持つ(民法 1036 条・597 条 3 項) | 配偶者側の相続人に承継される(先妻・先夫の子には渡らない) | 使い切った分は残らない |
| 主な注意点 | 遺言では「遺贈」の形が必要(民法 1028 条 1 項 2 号)。登記・費用負担・相続税評価あり | 売却の自由はあるが、代償金や遺留分の資金手当てが要る | 受取人指定が必須。非課税限度額を超える部分は相続税の課税対象 |
※ 民法(e-Gov 法令検索)、法務省の配偶者居住権の説明、 最高裁平成 16 年 10 月 29 日決定、国税庁タックスアンサー No.4114・No.4666 を基に作成。 どれが適しているかはご家庭の財産構成と関係性で変わります。組み合わせて使う設計もあり得ます。
配偶者居住権を使うときの確認事項
- 遺言で設定するなら「遺贈」の形にする民法 1028 条 1 項 2 号は「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」と定めている。文言の作り方で結論が変わるため、公証人・弁護士と作成するのが安全
- 相続開始の時に配偶者がその建物に居住していることが前提遺言を書いた時点ではなく、亡くなった時点で住んでいたかで判断される(民法 1028 条 1 項、法務省の説明)
- 被相続人が配偶者以外の人と建物を共有していた場合は取得できない民法 1028 条 1 項ただし書き。実家が親子共有・きょうだい共有になっている家は先に確認を
- 取得したら早めに登記する居住建物の所有者は配偶者に設定の登記を備えさせる義務を負う(民法 1031 条 1 項)。法務省も早期の登記手続を促している
- 存続期間は原則として配偶者の終身民法 1030 条。遺産分割の協議・遺言・家庭裁判所の審判で別段の定めをすることもできる
- 譲渡はできず、改築や第三者への貸与には所有者の承諾がいる民法 1032 条 2 項・3 項。違反して是正されない場合、所有者は権利を消滅させることができる(同 4 項)
- 通常の必要費は配偶者が負担する民法 1034 条 1 項。固定資産税や日常的な修繕の負担をどうするかは、設定前に家族で話しておきたいところ
- 相続税の課税対象で、評価方法が法令で定められている配偶者居住権・居住建物・敷地利用権・敷地の 4 つに区分して評価する(国税庁タックスアンサー No.4666)。税額の見通しは税理士に
自由度が高い制度ではない、というのが率直な印象です。 住み続けられる代わりに、売ることも貸すことも自分の判断だけではできません。 それでも、自宅を売らずに他の相続人へ分ける余地を作れる点は、 再婚家庭の実家相続では大きな意味を持ちます。 将来その家をどうするか(住み替え・売却・賃貸)の見通しも含めて、 設定するかどうかを決めるのがよさそうです。
生命保険金 — 現金を用意する手段としての位置づけ
代償金や当面の生活費を用意する手段として、生命保険がよく挙げられます。 死亡保険金は受取人が自分の権利として受け取るもので、 遺産分割で分ける遺産には原則として含まれないと扱われています。
ただし、無制限ではありません。 最高裁は、共同相続人の一人を受取人とする死亡保険金請求権について、民法 903 条 1 項の遺贈・贈与にあたる財産ではないとしています。 そのうえで、不公平が著しいときには例外があるとも判断しました (最高裁平成 16 年 10 月 29 日決定)。
例外にあたるかどうかは、次のような事情を総合して判断されます。
- 保険金の額
- 遺産総額に対する比率
- 被相続人との関係
- 各相続人の生活実態
基準は、受取人と他の共同相続人との不公平が 「民法 903 条の趣旨に照らして到底是認できないほど著しい」といえるかどうかです。 この特段の事情があるときに、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象になります。 つまり「保険にしておけば必ず対象外」と言い切れる制度ではありません。
税金の面では、相続人が受け取った死亡保険金には500 万円 × 法定相続人の数という非課税限度額があります (国税庁タックスアンサー No.4114)。 一方、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用がありません。 養子縁組をしていない連れ子を受取人にする場合は、ここも確認しておきたいところです。
年金 — 再婚すると遺族厚生年金の受給権はなくなる
シニア世代の再婚では、年金の扱いも押さえておく必要があります。 日本年金機構は、遺族年金を受けている方が結婚(事実上の婚姻関係を含む)をしたときは年金を受ける権利がなくなる(失権する)と案内しています。 「遺族年金失権届」の提出期限は、遺族厚生年金なら該当した日から 10 日以内、 遺族基礎年金なら 14 日以内とされています。 中高齢寡婦加算は遺族厚生年金の加算給付なので、 遺族厚生年金そのものの受給権がなくなれば、あわせて受けられなくなります。
再婚を考えるときに、この点を知らないまま話が進むと後から生活設計が狂います。 年金は個別の記録で結論が変わる領域なので、 具体的にいくら変わるのかは年金事務所で自分の記録に基づいて確認してください。
元気なうちにできること
ここまで見てくると、再婚家庭の相続でできることは亡くなる前に手を打っておくことにほぼ集約されます。 相続が始まってからでは、疎遠な相続人全員の合意が必要になり、 選べる手が一気に減ってしまうからです。
- 1相続人になる人を洗い出す最初に
前の結婚のときの子、連れ子の縁組の有無を含めて確定させる。戸籍で確認しておくと後の手間が違う
- 2実家の登記の状態を確認する早めに
共有になっていると配偶者居住権が使えない場合がある(民法 1028 条 1 項ただし書き)。登記事項証明書で確認を
- 3財産の内訳(不動産と現金の比率)を把握する早めに
実家しかない状態が紛争の温床。現金をどう用意するかがそのまま争点になる
- 4遺言の形と内容を専門家と設計する判断能力があるうちに
配偶者居住権を遺贈で設定するのか、所有権を渡すのか。遺留分への配慮も含めて弁護士・公証人と
- 5税額の見通しを税理士に確認する遺言作成と並行
配偶者居住権の評価(No.4666)、2 割加算(No.4157)、保険金の非課税枠(No.4114)は絡み合う
- 6家族に方針を伝えておく無理のない範囲で
内容そのものより「なぜそうしたか」が伝わっているかで、後の受け止め方が変わる
生前に財産を動かす選択肢もありますが、生前贈与には持ち戻しや税制上の注意点があり、 自宅を生前に動かすと小規模宅地等の特例が使えなくなる論点もあります。 どこから手を付けるべきかで迷ったら、相続の相談先ガイドで 士業ごとにできることの違いを確認してみてください。
よくある質問
Q. 前の結婚のときの子と何十年も連絡を取っていません。その子を外して遺産分割協議をしてもよいですか?
できません。民法 907 条 1 項は遺産分割の協議を「共同相続人」が行うものとしており、相続人が一人でも欠けた協議は無効と解されています。家庭裁判所の遺産分割調停でも、相続人のうちの一人または何人かが「他の相続人全員」を相手方として申し立てる建て付けになっています(裁判所「遺産分割調停」)。離婚によって終了するのは姻族関係(民法 728 条 1 項)であって、親と子の血族関係は残るため、前の結婚のときの子も民法 887 条 1 項の「被相続人の子」として相続人になります。連絡先が分からない場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどって相続人を特定し、その相続人の本籍地の市区町村で戸籍の附票の写しを請求して住所を確認するのが一般的な流れです(住民基本台帳法 20 条)。手紙の書き方や、その後まとまらないときの進め方は弁護士に相談してください。
Q. 再婚相手の連れ子に実家を遺したい場合、養子縁組と遺贈のどちらがよいですか?
どちらが良いかはご家庭の事情によるため一般論としてお答えします。養子縁組をすると、養子は民法 809 条により縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し、民法 887 条 1 項の「子」として相続人になります。遺留分(民法 1042 条)も持ちます。相続税では被相続人の養子は一親等の法定血族にあたるため、原則として 2 割加算の対象になりません(国税庁タックスアンサー No.4157。孫を養子にした場合など例外あり)。一方、養子縁組をせず遺言による遺贈で財産を渡す方法もありますが、この場合の受遺者は一親等の血族でも配偶者でもないため、相続税額の 2 割加算の対象になります(同 No.4157)。ほかの相続人の遺留分にも影響するので、実際にどちらを選ぶかは弁護士・税理士に相談したうえで決めてください。
Q. 配偶者居住権を設定すれば、揉めごとは起きなくなりますか?
揉めごとが起きなくなる制度ではありません。配偶者居住権(民法 1028 条〜1036 条、2020 年 4 月 1 日施行)は、自宅の所有権を子が取得しつつ、配偶者が無償で住み続けられるようにする権利です。自宅を売って代償金を作らなくても住まいを確保しやすくなる点が特徴ですが、遺言で設定するには「遺贈の目的とされたとき」に当たる必要があり(民法 1028 条 1 項 2 号)、遺留分がなくなるわけでもありません。また配偶者居住権は相続税の課税対象で、その評価方法は法令で定められています(国税庁タックスアンサー No.4666)。所有者側には登記を備えさせる義務があり(民法 1031 条 1 項)、配偶者は建物の通常の必要費を負担します(民法 1034 条 1 項)。設計を誤ると別のトラブルの種になり得るので、遺言の作成は公証人・弁護士と、税額の見通しは税理士と組み立てるのが安全です。
一般的な制度解説です(2026 年 7 月時点)。個別の法律判断・税額の判断はできません。相続分や遺留分、遺言の検討は弁護士へ。税額の試算は税理士へ。年金は年金事務所へご相談ください。
この記事の出典(5件)
- e-Gov 法令検索: 民法 728・809・887・890・900・902・907・908・1028〜1036・1042・1046・1048 条 / 住民基本台帳法 20 条
- 法務省: 相続法改正・配偶者居住権に関する公表資料
- 裁判所: 遺産分割調停の手続案内 / 最高裁 平成 16 年 10 月 29 日決定
- 国税庁タックスアンサー: No.4114 / No.4157 / No.4666
- 日本年金機構の公表情報